【Q&A】救急・外科を今考えているのですが、手先が不器用、物いじりなどもそんなに得意な方ではないのですが、目指していいのかと少し不安なので何かアドバイスをいただければと思います。
医学生向けにケースカンファレンス(講演)を行った際に、質問をいただきました。
【質問】救急・外科を今考えているのですが、手先が不器用、物いじりなどもそんなに医師という職業に興味のある高校生向けに講演を行った際に、質問をいただきました。得意な方ではないのですが、目指していいのかと少し不安なので何かアドバイスをいただければと思います。
【回答】
私はとにかく頭を使うのが苦手な人間なので、手や体を動かしたいと思って救急や外科、整形外科などで迷っていました。
どの科もそれぞれ魅力がありますよね。
ただ救急に関しては、各科の待機番の医師が対応する事が多い点や、専門分野として確立したのも(確か)比較的新しいということもあり、病院によってどの範囲までを救急科医が診て対応するかというのが異なるので、その点は注意が必要かもしれません。
本当にファーストタッチのみの病院もあれば、簡単な手術はその場でやってしまう病院もあったり。
受け持ち患者がいないので基本定時で上がれるという病院もあれば、救急科でも受け持ち患者が割り振られるので休みの日でも急変時に呼ばれることがある病院もあるのだとか…話で聞いたことがあります。
手技に関しては、確かに手先は器用であることに越したことはないのですが、かといって調子にのって取り返しのつかないミスをしてしまうよりかは、慎重に行動して何かあってもすぐに手を止められる人の方がいいと思います。
また、年々機械や製品も良いものが出てきており、手術の際も、腸管吻合などはほとんどの場合、自動吻合機を使っていますし、結ばなくても緩まない糸なんてのもあったりします(ちょっと不安だけど!(笑))。
手術も腹腔鏡での手術が主流になってきており、誰でも腕の良い先生の手術をみることができるし(開腹手術で奥まった場所の操作をする時は、執刀医と同じ視野を見る事はまず無理なのです。)、ドライボックスという練習キットを使っていくらでも練習することも可能です。
そうした理由から近年は誰がやっても同じクオリティーの手術が提供できるようにと、ガイドラインや推奨される手術の手順などが出来てきています。
誰でも初めて行う手技はおぼつかないですし思ったように道具を使いこなすのにも沢山の練習が必要ですが、時間と経験と努力次第でいくらでも腕を磨くことはできると思います。
目指したい気持ちがあるのであれば、是非挑戦してみてください!
【Q&A】高3です。医者を目指したいけど学力に自信がありません。アドバイスが欲しいです。
医師という職業に興味のある高校生向けに講演を行った際に、質問をいただきました。
【質問】高3です。医者を目指したいけど学力に自信がありません。アドバイスが欲しいです。
【回答】
私も高校時代は予備校の模試で毎回E判定しか取ることのできない学生で、今だに勉強は苦手です…。
最初は国立も視野に入れセンター試験対策で国語や倫理の勉強もしていましたが、到底自分には及ばないレベルだと判断して、途中から偏差値が低い私立大学4校に絞って受験をしました。
それでも結局合格することはできずに浪人しました。
大手予備校だと、大人数の波にのまれてしまって…医学部専門コースだと内容も難しくて、授業に出てノートを取るだけで精一杯となってしまって、全然実力が身についていないなと感じていたので、自分のレベルに合わせて浪人時代は少人数制の比較的小さい規模の医学部専門予備校に通うことにしました。
少人数制だとわからない問題があった時に比較的気軽に質問もできて、仲のいい友達も出来たので良い浪人時代を過ごせたなと今でも思っています。
結局私は、浪人生でも受ける事が出来る推薦入試を利用して私立医学部に奇跡的に合格することができました。
自分の中では手ごたえが無く(時間なくて大問ほぼ白紙で提出(笑))、絶対に落ちたと思っていたので本当に奇跡だと思っています。
私のように、親が許してくれるのであれば、スネをかじりまくってなんとか医者になるという事もできるかもしれません。
浪人という選択肢もありなのか、私立大学も候補に入れてよいのか。この辺りは各家庭の事情で変わってくると思うので、要相談ですね。
ちなみに医学部において1浪2浪は結構当たり前の世界で、現役生のほうが浪人生と比べて圧倒的に少ないと思います。
医学部合格はとても難しい壁の一つです。
どんなに人間性が優れていても学力で劣ってしまうと残念ながら合格することはできません。
さらに、医学部に合格出来たとしても、最短でも6年間の大学生活が待ち構えており、毎年次の学年へ進級するのもめちゃくちゃ大変でした。
教授の作る試験に合格しないといけないので…
問題も作る教授によって様々でした。
私の大学では1学年約120人前後いますが、毎年10人前後が留年しており、中には退学になってしまう人もいました。
途中でドロップアウトしてしまうと、その時点で最終学歴が高卒しか残らないという恐怖もあります。
こうした数々の困難を乗り越えて、大学を卒業し、医師国家試験に合格をして、ようやく医者になることができます。
医者になってからも、初めの数年間は上級医の先生やベテラン看護師にあれこれ言われ振り回される日々が続き、患者さんから文句を言われることも多々あります。
責任も重大で、ちょっとした選択ミスで患者さんの命が人生が左右されることもあります。
それでもやはり、病気で苦しんでいる患者さんに治療を行い、元気になってもらうという職業はとてもやりがいはあります。
医師になりたいという夢は素晴らしいと思います!
質問者さんはどんな医師になりたいと考えていますか??
御存じかと思いますが、病院では医者以外にも沢山の職種の人たちが働いています。
看護師もその内の一つですよね。
看護師は患者さんに寄り添って身の回りの介助を行っており、入院中は一番患者さんに近しい存在なのではないでしょうか。
食事や排泄、入浴の介助など。入院中の患者さんが生活する上で何かしらサポートが必要になった時にまず手を差し伸べてくれるのが看護師です。
認定看護師などになると、褥瘡(床ずれ)や簡単な傷の処置は医者よりもうまくやってのけたりします!
他にも、金銭面でのサポートが必要だったり、どこか施設に通わせなければならないといったときに親身にサポートしてくれるソーシャルワーカーや、胃や大腸がない人や糖尿病患者に対して、適切な栄養管理を指導してくださる栄養管理士など。
多くの職種の方々の協力の上で、初めて私たち医者は医療を行うことができます。
医者の仕事は、最終的な治療判断を行い、薬の処方や看護・リハビリ・食事などの指示を出して、実際に刺したり切ったり縫ったりと処置を行ったりする事です。
高校3年生という受験シーズンで、人生を大きく左右する選択を迫られており、とても大変な時期かと思います。
色々書きましたが、それでもやっぱり医師になりたいという夢が揺るがないのであれば、是非そこを目指してがむしゃらに頑張ってください!!!
体調には十分に気を付けて、体が資本ですからね!
いつか一緒に働ける日を楽しみにしています。
【Q&A】SDH以外で、これからの将来の医療で必要になってくるもの(知識や考え方)を知りたいです。
医師という職業に興味のある高校生向けに講演を行った際に、質問をいただきました。
【質問】SDH以外で、これからの将来の医療で必要になってくるもの(知識や考え方)を知りたいです。
【回答】
もうSDHなんて考え方を知っているんですね!
医療技術の発展に伴って治療の選択肢が増えてきていますが、どの治療を選ぶかは患者さん本人の意見が一番大切だと思います。
その人が何を求めているのか、その家族が何を求めているのか、自分の病院で提供できる医療範囲はどの程度なのかを話し合って、最終的にはなるべく患者さん本人の意見が尊重される選択肢を選べると良いと思います。
ただ、患者さん本人の意見がわからない場合や本心がなかなか聞き出せない場合も多々あります。(自殺企図があったり、認知症であったり、寝たきりだったり。)
いっぱい悩んでみてください!(笑)
【Q&A】医師になるうえで、学力以外に必要なものは何ですか?
医師という職業に興味のある高校生向けに講演を行った際に、質問をいただきました。
【質問】医師になるうえで、学力以外に必要なものは何ですか?
【回答】
臨床現場で働くのであればコミュニケーション能力は絶対に必要だと思います。
あとは、慣れもありますが、多少の話術も身についてくると思います。
世の中的に医者というと、なんか偉そうとか、すごく威厳がありそう、などのイメージがあるので、普通に接しているだけだと相手の本音や本心をつかむことがなかなか困難な場合が多いです。
それは相手が患者さんでも、同じ医療スタッフでも、です。
誰に対しても謙虚な心は忘れずにいるよう心掛けています。
しかしながら困ったことに、中にはあれこれと理不尽な文句ばかり言ってくる患者さんや上級医の先生、年配看護師などもいますので、その場合は聞き流して耐える能力も必要ですね。
【Q&A】医師になって気づいた事・良かったと思うことは何ですか?
医師という職業に興味のある高校生向けに講演を行った際に、質問をいただきました。
【質問】医師になって気づいた事・良かったと思うことは何ですか?
【回答】
医師として働く事が昔からの夢だったので、望んだ職に就いて仕事が出来ることはすごく良かったと思っています。
困っている人に寄り添って少しでも力になりたいなと思っているので、それを実感しやすい職でもあるかもしれません。
ただ、ひと昔前と比べると「お医者様」ではなく「患者様」といった具合で、診てもらうのが当たり前、治してもらうのが当たり前と捉えられて、全く感謝の意がない事や、逆恨みされる事もあります。
地域性の問題もあるかもしれませんが。
【Q&A】医師の勤務スタイル・ライフスタイル(仕事の日・休みの日)を教えてください。
医師という職業に興味のある高校生向けに講演を行った際に、質問をいただきました。
【質問】医師の勤務スタイル・ライフスタイル(仕事の日・休みの日)を教えてください。
【回答】
私の場合、平日は朝8時から病棟の回診、日中は手術をしたり、週一で外来をしたりしています。
土曜日は朝回診だけしています。
その他に月4回ほど当直があります。
大きな問題がなければ17時に仕事を切り上げますが、手術が長引いたり、患者さんの容態が変化したり、仕事が終わらないと20時過ぎまで病院に残ってしまう事もありますね。
仕事が終わった後や休みの日は自由に過ごしています。
健康維持のためにプールに行って泳いだり、最近は趣味でトランポリン施設に遊びに行ったり、バンドを組んでいるのでスタジオ練習したり、ライブハウスで活動したりもしています。(結構珍しい方だと自負しています。)
とはいえ何もない日は、自宅に籠ってYouTube見たりアニメ見たり漫画読んだりと、だらだら過ごして一日が終わることも少なくありませんね。
【Q&A】大学で楽しかったことを教えてほしいです
医師という職業に興味のある高校生向けに講演を行った際に、質問をいただきました。
【質問】大学で楽しかったことを教えてほしいです
【回答】
大学では部活動として水泳部に所属していたのですが、高校までとは異なり大学部活動は自分たちで企画し運営しなくてはいけませんでした。
大きなコミュニティーにおける上下関係や、自分たちで運営していく難しさなどを通じて、同期や先輩・後輩との絆を深めることができました。
もちろん楽しい事だけではなく辛い事も沢山ありましたが、全ていい経験でしたし、今となってはどれも良い思い出です。
後は、運転免許を取得して自由に使える車があったので、深夜に友達とふらっとドライブがてら温泉に行ったりプチ旅行をしてみたりと結構遊んでいたのですが、これはただただ楽しかったです。
【Q&A】差額ベッド代は病院が払っているのですか?赤字でお金がなくなったりはしませんか?
医師という職業に興味のある高校生向けに講演を行った際に、質問をいただきました。
【質問】差額ベッド代は病院が払っているのですか?赤字でお金がなくなったりはしませんか?
【回答】
差額ベッド代というのは正式には特別療養環境室料と言い、全額自己負担になります。
患者さんが通常の大部屋ではなく条件の良い個室等での入院を希望した際に請求される費用です。
患者さんが希望しなかった場合は、たとえ病院の都合で個室入院となっても差額ベッド代は発生しません。
当院では個室での管理が必要だと判断した患者さんを個室入院として対応しています。
逆に言うと、差額ベッド代を取らないというのは、「患者さんがどんなに希望しても病院側が必要だと判断しなければ個室に入院することはできない」という事です。
病院経営は基本赤字になりやすいため、多くの病院ではこの差額ベッド代を設けて経営を成り立たせていると聞きます。
当院の場合、病院自体は赤字経営なのですが、クリニックや診療所や老人保健施設など、他の事業所で得た利益で補って経営を成り立たせているそうです。
【Q&A】今の医療体制についての不満(責任多いなど)はありますか?それに対してどのように改善してほしいですか?
医師という職業に興味のある高校生向けに講演を行った際に、質問をいただきました。
【質問】今の医療体制についての不満(責任多いなど)はありますか?それに対してどのように改善してほしいですか?
【回答】
責任が重いことに関しては承知の上で働いているので、しょうがない事だと割り切っています。
電子カルテの業務量が多い事に関しては、早急なシステム改善を願っています。
もっとシンプルでわかりやすい画面にするとか、ガイドラインにのっとった治療法を提案してくれるAIみたいなシステムがあれば、医療の質も向上するだろうし、効率化によって空いた時間で患者さんと接する時間も増えて満足度も上がるのになあと思います。
他には、常勤(入職して働いている先生)と外勤(アルバイトの先生)との給料の差の大きさに不満というか疑問を感じています。
一般病院に勤める勤務医が同じ職場で当直を行う場合、1回あたりの手当は2万円前後が相場なのですが、他院で働いている医師がアルバイトとして当直を行う場合、手当は6万円前後が相場になっています。
これには保険や税金、労働基準など複雑な問題が絡んでくるようなのですが、結果として常勤で働くより外勤で働いた方が高収入を得られるというのが現在の医者の世界です。
常勤医の方がその病院の内情を知っているため、臨機応変に幅広い対応をスムーズに行えるはずなのに、その常勤医への待遇が外勤医よりも劣っていることに疑問を感じます。
給料体制の改善がなければ、一般病院における医師不足問題は解決困難かと思います。
【Q&A】書類業務が多いが、どうにか改善できないものか
医師という職業に興味のある高校生向けに講演を行った際に、質問をいただきました。
【質問】書類業務が多いが、どうにか改善できないものか
【回答】
かつては紙カルテで業務をしていたので、それと比べれば大分マシになっていると思います。
また事務の方に手伝ってもらっている仕事も沢山あるので、かなり助かっています。
それでもまだまだ書類業務が多いのは事実です。
薬剤師や理学療法士、管理栄養士の方に全てを任せてしまった方が効率が良いと思います。
しかし、全身状態を把握していなければ治療に反する処置を施してしまう可能性があり、何か問題やトラブルがあった時の責任は一番権限のある医者に帰すことになります。
医者が最終判断を下し指示を出さなくてはいけないという構造はなかなか覆せないと思います。