【初期研修医向け】採血できる?? 新人とベテランの違い
なかなか採血が取れなくて、ただただ時間だけが過ぎていく。
こんな経験ありませんか??
私も初期研修医の頃に沢山苦い経験をしてきました😔😔
昔と比べれば成功率は上がったものの、それでも後期研修医となった今でもうまく出来ないときも、もちろんあります。
新人とベテランの違いって何でしょうか?
(決して私がベテランという訳ではありませんが😅)
私が思うに、「どれだけ選択肢を持っているか」ではないでしょうか。
地獄の始まり
先輩から「採血やってみる?」って言われ
手技を磨く、またとないチャンスが来た!と思って「はいっ!やらせてください!」と元気よく答えたは良いものの、
なかなか採血がうまくできない…
「やらせてください」と言った手前、「やっぱり難しいです」「できません」「怖いです」ってなかなかすぐには言い出せなくて……
「ダメじゃないか!」「勉強してこなかったのか!」「練習不足じゃないのか!」と怒られるのが目に見えているから、
どうにかして採血をしなければ💦💦と思って、余計に焦ってしまったりして…
シリンジをいくら引いても全然血液は引けなくて…
なのに皮下出血は起きていて、青あざを作ってしまったり、腫れあがってしまったりで…
もう、どうしたらいいのか分からない状態で内心パニック
先輩から「もう諦めて交代しろ」「もういいから、手を下ろして」と言われるまで何度も黙々と挑戦するしか選択肢がなくて
患者さんを何度も刺してしまって、申し訳ない気持ちでいっぱいになって…
まさに地獄絵図!!
同じような感じで、何度も点滴のルートを取り直したり、何度も麻酔後の挿管を挑戦したり、何度もルンバ―ル(腰椎穿刺)を刺し直したりと、あたふたした経験はありませんか?
初期研修の先生だったり、新人の看護師さんとかも、このような苦い経験を積んだことがありますよね?
ぜひ沢山練習と経験を積んで、手技スキルを上げて行ってほしいのはもちろんなのですが。
ベテラン医師になったって、採血がうまくいかない日もありますよ。
そんな時、新人との違いは何なのか??
ズバリ、”次の手”を持っているかどうかではないでしょうか。
①左腕がダメなら右腕を。腕がダメなら足も見る。
単純ですけど、両手両足を駆血帯まいて見てみて、一番取りやすいと思う血管から採血するのが良いです。
難しそうだなと思ったら、まずは別の腕も見てみると良いですよ。
一番よく使われるのは、肘正中皮静脈(肘の真ん中の静脈)ですが。
採血なんて、結局は血が取れればどこの血管使ったって良いのです。
色々な血管をみて、一番取りやすそうな場所を狙ってみてください!
注意点としては
⚠️透析中のシャント血管はダメ
⚠️点滴より中枢側の血管はダメ
⚠️手関節付近の橈骨皮静脈はダメ
などがあります。
【透析中のシャント血管はダメ】
全然良い血管が無い時に、腕に隆々としたシャント血管があると、どうしてもそこに刺したい気持ちが出てきてしまいます……じゅるり…
ですが透析で使う大事な血管なので、なるべく長く使うためにも、安易に手を出してはいけません!
ただし、透析する時についでに一緒に採血してくれる事もあるので、次の透析日に採血してもらえないか確認しても良いかもしれませんね。
【点滴より中枢側の血管はダメ】
点滴入ってる血管の下流で採血したら、輸液で薄まってる血液になってしまうので、正確なデータが取れない可能性があります。
【手関節付近の橈骨皮静脈はダメ】
手首の親指付け根に、採血しやすそうな血管があるんですが…
近くに橈骨神経が走っているので、なるべく避けた方が良いです。。
私の病院では、採血実習の一環で新人看護師さんや新人の医者同士で採血の練習をしあう実習が昔あったのですが、そこで神経損傷を起こしてしまった事例があったらしく…
以来、スタッフ同士の採血実習は表向きは無くなりました。
個人的に練習しあってる事はあるようですが。
大事な神経が近くにあるとわかっている場所なので、くれぐれもご注意ください。
②中枢に向けてマッサージしてみる
駆血帯を巻いてから、末梢側から中枢側に向けて軽くマッサージすると、より血管を怒張させることができます。
他にも、血管を軽く指ではじくなど機械的刺激で血管を拡張させたり(有名だけどエビデンス無いのだとか…?)、蒸しタオルなどで温めてあげるといった方法もあるようです!
(指ではじく以外は実際にやった事はなかったなぁ~)
③翼状針を使う
シリンジに直針を付けて採血するよりも、翼状針を使った方が、針のブレが少なくて採血しやすいです。
手でずっと持っていなくても、テープなどで固定してしまう事も出来ますからね。
むしろ採血するときは基本翼状針で、直針は時々練習のためにやる、という先生も多いと思います。
④手袋を外してみる
標準予防対策の観点からすると、手袋はした方がよいのですが…
直接肌で触って、血管弾力の感触をより鮮明に感じながら採血するのも、成功率を上げるための一つのテクニックです。
同じ理由から、1サイズ小さい手袋でやってみるというのもありですね😏
⑤手背静脈も一つの手段
手背静脈は目視しやすいです。
ただ、患者さんからすると結構痛いので、出来たら腕で取ってあげたいです…。
これはもう血管次第ですね。
⑥静脈が無理なら動脈で
看護師さんが何回かやって採血出来ない患者さんとかがいると、「先生お願いしまーす」って回されてくる事があるんですが…
医師以上に採血に慣れている看護師さんがトライして出来ない採血は、大抵かなりハードルが高いです。
出来そうならチャレンジしてみても良いのですが。
見るからに難しそうだったら、最初から大腿動脈採血しちゃいます💦
患者さんも下手に何度も針を刺されるよりも、1発で取ってもらった方が楽ですからね。
動脈採血は、ある意味医者の特権です。
大抵これで取れると思います。
昔、すごい肥満患者さんから採血しようとした際に、針が血管まで届かなかったという、衝撃的な事がありましたが…
それは特殊事例ですね(笑)
注意点としては
⚠️採血後に5-10分は圧迫止血する。
⚠️感染症に注意。
こんなところですかね。
⑦エコーを使う
どうしても難しい時は、エコーで血管を見ながら穿刺するのも一つの手ですね。
エコーの準備に時間がかかるので、時間に余裕がある時に限りますね。
⑧他の人に手を変えてやってもらう
採血って無理な時は無理だったりします。
多少の運も関係してくると思うんですよね。(マジで)
なので、取れないときはあまりドツボにハマりすぎないようにして、他の先生に手を変えてやってもらうのも全然ありです。
手を変えたらすんなり成功した、なんてこともありますからね。
「代わってもらえますか?」となかなか言い出せないあなたに、(笑)
一つアドバイスとしては、「3回失敗したらあきらめて別の人に交代してもらう」と自分の中でルールを作っておくと良いと思います。
諦めも肝心なんです。
無理な時もあって当然なんです。
他の先生にバトンタッチする事も是非、選択肢の一つとして考えてほしいです🙂
勇気ある撤退を!!
「危ないかも」「何か変だ」と思った時にすぐに撤退できるか、というのはとても大事なことです!!
外科をやっていると、想定外にうまくいかないため、患者さんの安全を優先して「手術を中止する」という選択を迫られることもあります。
「先輩に言われたからやる」「自分の評価がさがらないようにやる」ではありません。
本当の目的は「患者さんを治療する」ことです。
言われた仕事をこなす、自身の手技レベルを上げる
たしかにこれらも大切なことだけど
患者さんに不利益が被る(こうむる)ことはあってはならないと思います。
とはいえ、上司が考えている以上に、新人という立場でのそのような行動はなかなか難しい事だったりするんですよね。
もっと気軽に、簡単に「できません」「むずかしいです」「怖いです」って言えた方がいいし、先輩たちはそれを言いやすい雰囲気づくりに尽力すべきなんですけどね。
自分たちが新人のころは、そうじゃなかった。
守られてなかった。
もっと厳しかった。
そんな環境のなかで、どうにか努力して今の自分があるのだから。
後輩たちにも、同じくらい苦労、プレッシャーをかけて努力させることが望ましい。
一理あるかもだけど…
その指導方法だけではうまくいかない、私のような豆腐メンタルな人間もいるという事を、理解していただきたいです。
ただ、残念なことにこのような考えを良しとする、この考えでうまくいく人も一定数いるのもまた事実。
どうしても今の職場が自分には合わないなと思ったときは、、その時はもう、職場を変えるという究極的な選択肢も検討しても良いのかもしれませんね💦💦