一般外科医りくの雑記帳

―私が後輩に伝えたいこと―

【Q&A】高3です。医者を目指したいけど学力に自信がありません。アドバイスが欲しいです。

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医師という職業に興味のある高校生向けに講演を行った際に、質問をいただきました。

 

【質問】高3です。医者を目指したいけど学力に自信がありません。アドバイスが欲しいです。

 

【回答】

私も高校時代は予備校の模試で毎回E判定しか取ることのできない学生で、今だに勉強は苦手です…。

最初は国立も視野に入れセンター試験対策で国語や倫理の勉強もしていましたが、到底自分には及ばないレベルだと判断して、途中から偏差値が低い私立大学4校に絞って受験をしました。

それでも結局合格することはできずに浪人しました。

 

大手予備校だと、大人数の波にのまれてしまって…医学部専門コースだと内容も難しくて、授業に出てノートを取るだけで精一杯となってしまって、全然実力が身についていないなと感じていたので、自分のレベルに合わせて浪人時代は少人数制の比較的小さい規模の医学部専門予備校に通うことにしました。

少人数制だとわからない問題があった時に比較的気軽に質問もできて、仲のいい友達も出来たので良い浪人時代を過ごせたなと今でも思っています。

 

結局私は、浪人生でも受ける事が出来る推薦入試を利用して私立医学部に奇跡的に合格することができました。

自分の中では手ごたえが無く(時間なくて大問ほぼ白紙で提出(笑))、絶対に落ちたと思っていたので本当に奇跡だと思っています。

 

私のように、親が許してくれるのであれば、スネをかじりまくってなんとか医者になるという事もできるかもしれません。

浪人という選択肢もありなのか、私立大学も候補に入れてよいのか。この辺りは各家庭の事情で変わってくると思うので、要相談ですね。

ちなみに医学部において1浪2浪は結構当たり前の世界で、現役生のほうが浪人生と比べて圧倒的に少ないと思います。

 

医学部合格はとても難しい壁の一つです。

どんなに人間性が優れていても学力で劣ってしまうと残念ながら合格することはできません。

さらに、医学部に合格出来たとしても、最短でも6年間の大学生活が待ち構えており、毎年次の学年へ進級するのもめちゃくちゃ大変でした。

教授の作る試験に合格しないといけないので…

問題も作る教授によって様々でした。

私の大学では1学年約120人前後いますが、毎年10人前後が留年しており、中には退学になってしまう人もいました。

途中でドロップアウトしてしまうと、その時点で最終学歴が高卒しか残らないという恐怖もあります。

 

こうした数々の困難を乗り越えて、大学を卒業し、医師国家試験に合格をして、ようやく医者になることができます。

医者になってからも、初めの数年間は上級医の先生やベテラン看護師にあれこれ言われ振り回される日々が続き、患者さんから文句を言われることも多々あります。

責任も重大で、ちょっとした選択ミスで患者さんの命が人生が左右されることもあります。

それでもやはり、病気で苦しんでいる患者さんに治療を行い、元気になってもらうという職業はとてもやりがいはあります。

 

医師になりたいという夢は素晴らしいと思います!

質問者さんはどんな医師になりたいと考えていますか??

 

御存じかと思いますが、病院では医者以外にも沢山の職種の人たちが働いています。

看護師もその内の一つですよね。

看護師は患者さんに寄り添って身の回りの介助を行っており、入院中は一番患者さんに近しい存在なのではないでしょうか。

食事や排泄、入浴の介助など。入院中の患者さんが生活する上で何かしらサポートが必要になった時にまず手を差し伸べてくれるのが看護師です。

認定看護師などになると、褥瘡(床ずれ)や簡単な傷の処置は医者よりもうまくやってのけたりします!


他にも、金銭面でのサポートが必要だったり、どこか施設に通わせなければならないといったときに親身にサポートしてくれるソーシャルワーカーや、胃や大腸がない人や糖尿病患者に対して、適切な栄養管理を指導してくださる栄養管理士など。

多くの職種の方々の協力の上で、初めて私たち医者は医療を行うことができます。

医者の仕事は、最終的な治療判断を行い、薬の処方や看護・リハビリ・食事などの指示を出して、実際に刺したり切ったり縫ったりと処置を行ったりする事です。

 

高校3年生という受験シーズンで、人生を大きく左右する選択を迫られており、とても大変な時期かと思います。

色々書きましたが、それでもやっぱり医師になりたいという夢が揺るがないのであれば、是非そこを目指してがむしゃらに頑張ってください!!!

体調には十分に気を付けて、体が資本ですからね!

いつか一緒に働ける日を楽しみにしています。