一般外科医りくの雑記帳

―私が後輩に伝えたいこと―

【Q&A】私は学校で度々安楽死や尊厳死について考える機会が与えられるのですが、実際現役の医療従事者の方々は安楽死をどのように考えていますか?

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医師という職業に興味のある高校生向けに講演を行った際に、質問をいただきました。

 

【質問】私は学校で度々安楽死尊厳死について考える機会が与えられるのですが、実際現役の医療従事者の方々は安楽死をどのように考えていますか?

 

【回答】

ご存じかもしれませんが、病気などで苦しんでいる人に対して積極的に命を絶つ行為を行うことを安楽死といい、これは日本では法律上認められておりません。

病気の苦しみや痛みを和らげることを目的に麻薬などを使用することは、緩和ケアの一環として日本でも認められている医療行為であり、これによって寿命が短くなる事はないとされています。

尊厳死というのは、延命治療の一環で行われる気管挿管(口から肺に管を入れて人工呼吸器につなぐ方法。当然しゃべることはできません。)や、胸骨圧迫(いわゆる心臓マッサージ。肋骨がバキバキに折れる事もあります。)などの侵襲を伴う医療行為を、あえて行わないで最期を迎える事を指し、結果的に寿命が短くなる選択肢だったとしても安楽死とは言いません。

 

患者さん本人と話していると、「最後は楽に死にたい」「延命措置はしなくていい」という考えの人が多いです。

一方で患者さんの家族からは「なんとしても死なせないでほしい」「延命してほしい」という意見を聞くことがあります。

「純粋にただ長く生きていてほしい」と考える家族もいれば、信じられないかもしれませんが「患者さんの年金で生活費をまかなっているから、なるべく長い期間生きてもらい年金の受給期間を延ばしたい」なんていう非常に身勝手な考えの家族もいたりします。

 

私自身は患者さん本人の意見を一番に尊重して、よりよい最期を迎えていただきたいなと思っています。

安楽死に関しては様々な意見があるので、あくまで私個人の考えになってしまいますが…。

目の前に「死にたい」と言っている人がいたとしても、よくよく話を聞くと「痛いから、死にたい」「苦しいから、死にたい」「人に嫌われたくないから、死にたい」など、様々な原因があるはずです。

安楽死というのは、これらの原因から逃避している結果のように私は感じます。

まずは原因を除去する努力、つまり傾聴や緩和ケアなどですね、を行うべきだと私は思います。